レガシーシステムの棚卸しは、システムごとに7つの問いに答える1ページで行います。責任者、利用者、データと個人データの有無、連携先、止まったら何が止まるか、ライセンスの更新日、そして使用技術とサポート終了時期です。そのうえで各システムに5つの判断のいずれかを割り当てます。維持、廃止、既製品への置き換え、そのままクラウドへ移行、再構築です。これはAmazonの公式移行ガイドにある7つの戦略を簡略化したものです。AIは技術面の半分を速めますが、システムの責任者が誰かは教えてくれません。

第2回では各システムを8点満点で採点しました。点数はリスクの所在を示し、棚卸しは判断に必要な情報を与えてくれます。

各システムのページに書くこと

始めるのに特別なソフトウェアは要りません。各システムについて次の問いに答えていれば、シンプルな表で十分です。

  • 責任者:IT部門ではなく、業務側でシステムについて決める特定の1人。見つからなければ、それが棚卸しの最初の発見です。
  • 利用者:どの部署が使っているか、おおよそ何人か、社外の顧客や取引先も使っているか。
  • データ:何を保存しているか、顧客や従業員の個人データを含むか、実際にどこにあるか。社内のサーバーかクラウドか、どの国か。
  • 連携先:データがどこから来てどこへ行くか。請求、銀行、オンラインストア、給与、毎週書き出されるExcelファイルなど。
  • 停止時の影響:丸1日止まったら何が起きるか。売上が止まるのか、給与が遅れるのか、誰も気づかないのか。
  • ライセンスと契約:誰に支払っているか、契約はいつ更新されるか、更新前に通知期限があるか。更新日が、判断を固めるべき時期を決めることが多いのです。
  • 技術とサポート:プログラミング言語、データベース、OS、そしてそれぞれのサポート終了時期。第2回で見たとおりです。

棚卸しの結果、実際のシステムの一部が日々の業務を支える表計算ファイルだと分かったら、その棚卸し方法はどのシートが本当のシステムかで解説しています。

データの問い:飛ばさないこと

個人データの列は他のどの列よりも重要です。判断を変えるからです。顧客の氏名や電話番号、従業員の記録を保存するシステムは、サウジデータ・人工知能庁(SDAIA)が監督する個人データ保護法(PDPL)の対象であり、モダナイゼーション中にそのデータを王国外へ移したり王国外で処理したりする場合は、着手前に確認が必要です。実務上の義務は企業向けPDPLガイドで解説しています。

これはモダナイゼーションのツールそのものにも関わります。たとえばAWS Transformの公式リージョンページは、ワークスペースを作成できる9つのリージョンを挙げていますが、中東のリージョンはなく、作業しているリージョンとは別のリージョンでデータが処理される場合があると注意しています。サウジ通信社の2026年9月1日の報道によると、Amazonは王国内初のクラウドリージョンが2026年12月の開設に向けて順調だと発表しました。ですから、各システムのデータが今どこにあるかを書き留め、どのツールなら問題なく読み込めるかを把握しておきましょう。

AIは棚卸しをどう速めるか、そして何を知り得ないか

棚卸しの技術面は、かつてはサーバーの確認とコードの手読みに何週間もかかりました。今のツールはサーバーとコードを読み、それらの連携を自動で図にします。数ある例の1つとして、AmazonはAWS Transformのページで、同社のエージェントが検出とウェーブ計画から切り替えまで移行を自動化し、メインフレームの評価は数か月の検出作業を数時間に短縮すると述べています。これはAmazonの主張であり、保証された結果ではありません。料金ページでは、評価は現在無料のエージェントに含まれています。

Amazonの移行ガイドは、検出ツール自身のデータを使って廃止できるシステムを見つける実用的な目安も示しています。

  • CPUとメモリの平均使用率が5パーセント未満のシステムを、ガイドはゾンビアプリケーションと呼びます。
  • 90日間の使用率が5から20パーセントのシステムを、アイドルアプリケーションと呼びます。
  • 直近90日間に受信接続が1件もないシステムは、廃止の候補です。

しかしツールは、誰がシステムの責任者か、契約がいつ更新されるか、それを理解している唯一の社員が来年退職すること、年に1度のザカート報告書がそこからしか出てこないことを知りません。それは各システムの責任者と利用者への短いヒアリングから得られます。機械が技術の列を埋め、人が業務の列を埋めるのです。

各システムに対する5つの判断

棚卸しの後、各システムに1つの判断を割り当てます。以下はAmazonのガイドにある7つの戦略を簡略化したものです。

判断平たく言うと向いているケース
維持当面は現状のまま、監視を続ける安定して孤立している、特殊なハードウェアに依存している、最近更新した、またはベンダーの既製版を待っている
廃止停止してデータをアーカイブする業務上の価値がない、ほとんど使われていない、またはモダナイズする価値のないサポート切れ技術
既製品に置き換え同じ仕事をする製品やサブスクリプションを購入する業務が一般的で差別化要因ではなく、大きな改修なしで製品がカバーできる
そのまま移行コードを変えずにクラウドへ移す問題がソフトウェア自体ではなく、サーバーやハードウェアにある
再構築書き直す、または構造を変えるそのビジネスルールこそが差別化要因で、改修できないか、保守できる人がいない

ガイドは、再構築が最も複雑で費用のかかる選択肢だと警告し、大規模な移行ではまずシステムを移し、移行完了後にモダナイズすることを推奨しています。クラウドを選ぶなら、サウジ企業のためのクラウド移行ガイドから始めてください。

Origamiの視点

私たちはシステムを作り、つなぎ、古いシステムをモダナイズしていますが、それでもすべてのモダナイゼーション案件をコードではなく棚卸しから始めます。連携が分からないシステムは、顧客から苦情が来るまで見えない何かを壊すかもしれません。そして棚卸しをすると、多くのシステムにとって正しい判断は再構築ではなく、維持か廃止だと分かることがよくあります。

そこで私たちはAIツールでサーバーとコードを素早く読み取り、連携を図にしたうえで、各システムの責任者と膝を突き合わせてツールが知り得ない部分を補い、システムごとに1つの判断と明確な着手順を導き出します。私たちの進め方に興味があれば、サービス紹介をご覧ください。

今週の課題:システムごとに1ページ

第2回の課題で8点中6点以上だったシステムを選び、それぞれについて次の表を1ページにまとめてください。

項目回答
システム名と役割を一文で
業務側の責任者
利用者(部署、おおよその人数、社外関係者)
データ、個人データの有無、保存場所
入力と出力の連携
1日止まったら何が止まるか
ライセンス、更新日、通知期限
使用技術とサポート終了時期
第2回の点数(8点満点)
暫定の判断(5つのうち1つ)

判断は鉛筆で書いてください。システムの中にどんなルールが潜んでいるか分かるまでは暫定であり、それが次回のテーマです。

次回予告

これで各システムの棚卸しと暫定の判断がそろいました。しかし再構築すると決めたシステムには、最も価値ある資産が隠れています。割引、価格、延滞料、承認の本当のビジネスルールが、コードの中と人の頭の中に埋もれているのです。第4回では、AIが古いシステムからそれらのルールを抽出し、明確な仕様として書き出す方法と、新しいコードを書く前に各プロセスの責任者がすべてのルールを確認しなければならない理由を解説します。

出典